デザイナだけど色覚異常(色弱)と診断された
この文章のまとめ:「自分ってたぶん色覚異常だろうな」と思っている人は、その辺の眼科で色覚検査受けても「たぶんそうです」以上の収穫は得られないのでやる意味無いよ
いつからとはっきりとは覚えていないが、ここ数年自分は色弱(日本眼科学会的にはこの語は2005年の眼科用語集の改定で廃止された古い語らしい)なのだろうな、とは思っていた。その上で取り立てて言うほど強い実感をもって困りごとと認識していたわけではなかったが、たまたま思い立って(後述)JR大塚駅の近所の眼科にかかり、検査を受けてみたところ、色覚異常と診断された。
病院に行って色覚検査を受けたいと相談すると、確定診断という診断書を出せるレベルの検査ではなく簡易的なものになると説明された。きちんとした診断は眼科であっても市中の病院ではそもそも受けることが出来ないものらしい。
まず一般的な視力検査、屈折度の検査(赤い気球の絵を見せられ、近視や乱視でないか判定する)、眼圧の検査を行う。その上で「石原式色覚異常検査表」を使った検査と「パネルD-15」を使った検査を行った。
「石原式」では、小さな本に印刷された様々な色の丸を組み合わせた図形を順番に見せられ、数字を読み取ったり、線をなぞったりするタスクを行う。「線が見えたらなぞってください」というめちゃくちゃ曖昧な指示を出されてかなり不安になるが、そういうものなのかな。たぶん。
パネルD-15テストでは、16色の微妙に異なる色のついたプラスチックのパネルを渡され、基準となる1つから最も色が近いものを選び隣に置く、それに最も近いものをまた隣に置く、という要領で並べ替える。後でネットで調べたところによると、色覚異常のどの類型であるかという結果が出るものらしいのだが、何も教えてもらえなかった。たぶん強い色覚異常は認められないという結論だったということなのだとは思うが、謎。というか、視力も眼圧もとにかく何も結果を教えてもらえなかった。ちゃんとしつこく聞けばよかった……。
一通り検査を終えた後、しばらく待つと診察室に呼ばれ、軽度の先天色覚異常だろう、たぶん、と言われた。この種の検査ではそれ以上のことは言えないとのことらしい。色覚異常のどの類型なのか、も教えてもらえなかった。
人間の眼にはS、M、Lの3種類の錐体細胞があり、可視光線の短波長から長波長の3か所にそれぞれ強く反応する(超ざっくり言うと赤緑青の三原色に対応するセンサーがあるイメージ)。各細胞が「正常」「不完全」「全く機能していない」の3通りの可能性があるので、合計27通りの類型が考えられることになる。
今回の検査では、そのうちのどの類型なのか、つまりどのような色とどのような色の区別が健常者(?)と比較して困難なのか、は教えてもらえなかった。なので、自分としては「こういう場面では人と違う知覚をしている恐れがあるから気を付けないと」という風に意識することは特にできるようにはならなかった。(学会では日本人男性の20人に1人は先天赤緑色覚異常、と言われているらしい。1979年に名古屋市内の小学四年生の児童約33,000人を対象に調査した(市川一夫『色覚異常の遺伝』(1982))結果がソースだそうだが、そんな1地域で40年前に調べたデータのままでいいのかと素人的には思ってしまうが……(間違っていたら誰か教えてほしい!!)。また分布は偏っていてPA、DA、P、Dの4類型で先天色覚異常者全体の99.9%を占めると言われるそうだが、その4類型のうちのどれなのかもう少し絞り込んでほしかった)
一方、「警察官とかには多分なれないと思います」「治療は不可能です」ということだけはやたら強調して伝えられた。そういう粒度の結果しか得られないのであれば、わざわざお金を払って検査を受ける意味ってあんまりなかったな、と思わなくもない。本格的な検査を受けるかどうかは、今のところあまり何も考えていない。
ちなみに検査を受けるに至ったきっかけの一つは、シェアサイクルのLUUPのアプリが使いにくいと感じたことだった。
LUUPのメイン画面は地図上にマーカーが表示される画面で、各マーカーはポート(自転車やキックボードを乗り降りできる場所)の位置と満車・空車を示している。問題は、その画面上3mm四方しかないマーカーが緑色なのか灰色なのかを読み取らないといけないのだ。緑色と灰色は2型色覚で典型的な混同しやすい色の組み合わせである。これは日本眼科医会のソース不明の情報では日本人男性の4%弱を占めるらしい。そうでなくても、太陽光下の屋外で頻繁に使うことを想定されるアプリのデザインとしてコントラスト比1.09:1の #9FA4AA
と #01AEA8
を使うのはさすがにオシャレに寄せすぎではないかと思うのだが、待てよ、案外多くの人は困らないのかな? ということが気になって、検査を受けることにしたというわけ。
なお、僕の仕事上、特に困ってはいない。たぶん周囲から見ても何も問題は起きていないと思う。そもそも他人に特にデザイナと認知されてもいないわけだけれど。
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